大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和25(れ)1624 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人鍜治利一の上告趣意第一点について。

しかし、窃盗既遂の罪は、不法領得の意思を以て他人の支配内に存する財物を自

己の支配内に移すを以て直に成立し、必ずしも犯人がこれを自由に処分し得べき安

全な場所に持ち去ることを要するものではない。されば、所論白米四斗及びパンツ

五百枚入りのもの一梱を判示倉庫内より倉庫外に持ち出せば、その時において窃盗

既遂罪は成立し、これを他の場所に持ち去ることを要しないものであるから、原判

決がその挙示の証拠により判示窃盗既遂の事実を認定したからといつて、証拠に反

して事実を確定した違法があるとはいえないし、また、原判決が既に倉庫外に持ち

出した物品について窃盗の中止未遂としないで窃盗既遂の法條を以て処断したのは

正当であつて、法律適用を誤つたものとはいえない。論旨はその理由がない。

同第二点について。

しかし、原判決挙示の証拠によれば、原判示第二の準強盗の事実を肯諾するに足

り、その間実験則に反し若しくは審理を盡さない不法は認められない。論旨は、そ

れ故に採用できない。

弁護人裾分正重の上告趣意第一点について。

しかし、公判廷における被告人の自白は、憲法三八條三項にいわゆる自白に含ま

れないものであることは当裁判所大法廷不動の判例であるから、所論の(一)は、

その理由がなく、また、所論の(二)は一所為数法の関係にあるものとして擬律し

た原判決の見解を併合罪であると主張するものであるから、被告人のためにする上

告理由としては採ることができない。

同第二点について。

- 1 -

所論は、原判決が適法にした事実の認定を重大な事実の誤認であると主張するも

のであるから、当法律審適法の上告理由ではない。そして、本件は旧法事件である

から、新刑訴四一一條の職権発動を爲すべき余地も存しない。

よつて、旧刑訴四四六條に從い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

検察官 松本武裕與

昭和二六年一月二五日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 岩 松 三 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!